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木戸良平さんの 時代箪笥


からくりに魅せられた男

木戸良平さんは新聞記者だった。だが、今で言う、脱サラして工芸職人に、と言ってしまうにはその理由がふるっている。岩手の郷土芸能に惚れ込み、岩手に住みたかったためという。今では地元、黒川さんさ踊りや、紫波町山屋田植え踊りなどの祭には、自分で作った篠笛を吹く。
さて、岩手日報の記者として4年勤めたのち、雫石の組子(くみこ)の第一人者四ツ家芳雄氏に入門がかなう。ところが、3ヵ月後に師は他界。やむなく1年間研修所で木工の基礎を学んだ後、花巻の骨董屋のおやじさんに頼まれて古い家具の修理を手がけたりしながら、ほとんど独学で箪笥作りの技を覚えてしまった。“小さいときから図画工作はいつも5でした“、とは言うものの、木戸さんの作る船箪笥のからくりを見れば、かなり緻密な頭脳の持ち主であることがわかる。好奇心、観察力、カンの良さ、経験から学ぶ力、工夫を惜しまない、といった優れた職人になるための必須要素を、どうやら兼ね備えているらしい。鉄の金具も自分で作るが、最初は、鉄板を”赤める“ための火の起こし方さえ知らなかった、と苦笑する。仕上げに漆を塗るのも、漆職人が塗っているところを一度見ただけで、何度もの失敗のあげく、技を自分のものにした。習って覚えるのではなく、”試して会得する“のが木戸流もの作りといえそうだ。


船箪笥


しかけだらけの船箪笥

船箪笥は、北前船などで大金を持ち運ぶとき、頑丈で自分以外の誰にも開けられないしくみをもった小型金庫として作られたものだ。船が浸水しても中身が安全なように、中は桐材を使う。表面は木目の美しい欅が好まれた。さらに、強度を増すためと装飾として、独特の形を持つ鉄の錺(かざり)金具が打たれている。木戸さんが作る船箪笥は、木部の部材300枚余、鉄棒を赤めて作る釘300〜500本。鍵5本。慣れた今でも、釘を100本作るのに1日はかかる。200年後、箪笥を修理するであろう人に、出来の悪い釘を使っている、と思われるのがいや、という心意気で鉄を打つ。
木戸さんは、船箪笥のからくりを気前良く披露してくれる。すべての引き出しや開きを取り外した後、まだ、からくりがありますよ、見つけて下さい、という。

しかけと部品

こちらは頭を箪笥の中に突っ込んでどこかにしかけはないかと探す。でも、見つからない。嬉しそうな顔で木戸さんは、おもむろに、ここに一つ、そして、ここにもう一つ、と、上げ底になっている引き出しや、桐板の奥の小さな窪みを示す。緻密で仕上げの良い細工の成果というわけだ。

 

悩みは時間のないこと

納得のゆく作業をすると時間がかかる。乾燥させた材木から板を荒切りし、寸法通りに切り出し、鉋をかけ、ほぞを組み、漆を塗り重ね、金具を作るなどの作業は、すべて一人でやる。分業をしきたりとする職人仕事ならば、木挽き職人、指物職人、漆職人、金具職人と、少なくとも4職の作業でできあがっていくものだ。とはいえ、納期が迫れば、つい見えない部分の手抜きをしたい誘惑にもかられる。そんな心を戒めるように、作業場には「省略しない」の文字が大きく掲げられている。
そんな徹底したもの作りの姿勢を貫こうとすれば、作れる数は非常に少ない。木戸さんの船箪笥は、注文して最低2年はお待ち願う。200年、300年と使われ続ける家具ならば、2年なんて短いとも言える。
最近手掛けるようになった家具に、木挽きの跡を景色として残し、漆で仕上げた栓材のチェストがある。釘を使わず組みだけでできているので、必要とあればすべての部材をばらすことができる。シンプルでモダンな意匠に手の味が加わった、白いインテリアの家に映えそうな家具だ。もちろん、金具も手作り。こちらはそんなに長くお待たせしないですむそうだ。(28万円)

キャビネット

 


気軽に使ってほしい正座椅子

団塊の世代は、足の折り畳める卓袱台も知っているが、ギンガムのテーブルクロスがかかったダイニングテーブルでトーストの朝食、というのが“豊かな暮らし”とされて育った。この年代もそろそろ節々が痛む年頃となってきたのではないだろうか。木戸さんの作る桐の正座椅子は、軽くてスマート、解体して持ち運びに便利、と三拍子そろった逸品。

 

解体後の正座椅子

正座椅子

体型にあわせて4種類の高さで用意されているのも嬉しい。お葬式、お稽古ごと、お食事と、畳の席でみっともない姿を見せたくないとき必携の品が、手作りの布袋に入っている。一見、全体重をかけるには華奢に見えるが、まだ、お尻の下で潰れた、との苦情はないそうだ。
今回は、この正座椅子をhandmadejapan.comのshoppingでご紹介する。


 

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