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Feature 011「府川次男の和装本」では、この世に一冊しかない手作りの本のことをご紹介します。本というより、和風ノートブックと言ったほうがいいでしょうか。残しておきたい絵葉書、年賀状、珍しい切手、ワインのラベル、海外旅行のおりの種々入場券の半券、押し花、自作のスケッチ、愛猫の写真などなど、想い出や愛着があってちょっと捨てにくくて、何となく手元に残しているうちにたまってしまった。そうしたものをテーマごとにまとめて一冊に仕立てる和風ノートブックです。もちろん、芳名帳として、また、さらさらと和歌や俳句を記せば奥ゆかしさが際立つでしょう。

船箪笥
四つ目綴、麻の葉綴、康熈綴など

和装本づくりをこよなく愛する府川次男さんの本当の姿は元校長先生。大学講師、全日本書写書道教育研究所事務局長等を歴任し、現在はカルチャーセンター講師。その洒脱な語り口からはちょっと意外な、まじめ路線を歩んでいらした教育者です。先生の幼いころ、つまり第二次世界大戦戦中戦後は、ノートさえも手に入れにくい時代。新聞のはさみ込み広告の白い裏を束ね、ノートにしたてて使ったそうです。和装本づくりに興味をもち、独学を積み工夫をこらすことになった原点は、この体験かもしれないとおっしゃいます。本格的に和装本づくりに目覚めたのは大学時代、『製本之輯』という昭和16年出版の珍しい書物を3日間だけ借り出すことができ、全ページを写真に撮り、教科書がわりとして製本を独学して以来。綴じ方にも四つ目綴、亀甲綴、麻の葉綴など伝統的な綴じ方に加え、府川オリジナルを考案することとなりました。“うっかり間違って穴を開けてしまったようなとき、偶然に新しい綴じ方を発見する。綴じ方は無限ともいえる”とおっしゃいます。
沖縄の染織作家上原美智子さんの
帯地に和紙を裏打ちして

そもそも和本の始まりはいつなのか。先生の著書の抜粋から。「、、、日本最古の本は、7世紀初めの聖徳太子自筆になる巻子本の法華経義疎と言い伝えられている。その後、大和風に改良され種々の本が生まれた。、、、、平安時代における写経や絵巻物などは、欧州中世のさし絵と並んで日本の本の芸術ということができる。和本の形態は、奈良時代の巻子本から平安時代に入って、巻子本に折りをいれて折り本、その前後の表紙を連続させた旋風葉、紙を一枚ずつ中央から縦に二つ折りして折り目を表紙に糊づけした粘葉(でっちょう)、または胡蝶装などの册子が制作されるようになった。やがて木版印刷の発明により版本が製作され、江戸時代にはその全盛を極めた。そして、日本独特の和綴の方法が工夫され、大和綴、四つ目綴、康熈綴、亀甲綴、麻の葉綴、唐本などの種類を生んだ。また、料紙の大きさによって美濃本、半紙本、中本、小本、豆本がある。その他、庶民文化を支える諸文書として、大福帳、判取帳、糊入れ本、通帳などがあり、昭和初期までにわたって活用されたのである。

そして洋書全盛時代がやってきて、今や、和装本は謡曲など伝統芸能の世界に残るばかり。商家の大福帳はコンピュータにかわり、墨色も黒々とした365枚の日めくりも、家庭から姿を消しました。

和装本を納めておく帙(ちつ)。
これも麻布をつかった手作りです
折り本。表紙に古布をつかいました

府川先生は、現代に使えて趣味や個性を発揮できる和装本作りを提唱されています。作り方を習ってみると、初心者にもそれなりのものはできるのですが、重なった紙に微妙なずれが生じ、完璧なものができないところに、熟練の技を要するようです。また、表紙に布を使うときは、和紙で裏打ちして布の目の動きをとめる必要があります。これは掛軸や屏風を作る経師の技です。また、綴じ糸も、絹、木綿、化繊などとあり、色、太さ、撚りの強弱によっても表紙の表情を変えます。もちろん、中の紙も手漉和紙から機械漉まで、用途に応じて選ぶのも愉しそうです。
『はじめての和装本』(文化出版局)は、府川先生流和装本の作り方を丁寧に説明していて、自分で作ってみようという方には重宝な一冊です。



  ショッピングでは、折々に手に入った素敵な和紙、稀少価値のある古布、染織家から譲り受けた端切布などを表紙にした和綴本を販売します。いずれの場合も、一点限りということが多くなるかと思います。中の紙は竹の繊維を漉き込んだ福井の手漉竹紙や、土佐の楮手漉き半紙などです。

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