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鄙びた味わいの清和文楽


熊本への所用のついでに、以前から気になっていた農民文楽を見に足をのばした。『清和文楽』は熊本県上益城郡清和村に伝わる雛びた文楽。江戸時代末期、淡路からの旅回わりの一座から農民たちが習い覚えたのが始まり。「くまもとアートポリス構想」の一環として文楽館、資料館、そして物産館と施設も充実し、"箱造り"に終らず、ソフトも充実した地域興しの好例となっている。

この日の出し物は『雪おんな』。原作者小泉八雲が熊本に住んでいたことから、新作として作られたものという。ちょっと腰の辺りが太めの人形遣いが緩やかな動作で、雪女の化身である若女房の頭を震わせる。雪女に変身する時、人形の目は一瞬にして金色に充血し、口ががばっと開いて鬼の形相。なかなかの迫力である。



終了後に頭巾を脱いだ遣い手たちが皆、女性だったのには意表をつかれた。農作業で日焼けした農家のおばちゃんたちだ。どうりで、腰のまわりがたっぷり豊かであったわけだ。男女18名からなる「清和文楽保存会」の平均年令は63才。年に250回の公演をこなす。日に4公演するときもあるという。農繁期には、田圃からおばちゃんたち開演時刻目指して走り込んできて舞台を勤める、というのも微笑ましい。
人形遣いが熟年であるのに比べて、浄瑠璃と太棹の三味線を弾いているのは20台の青年。淡路島の人形浄瑠璃で修行を積んだ地元の若者たちだ。終演後、食堂にいってみると、すでにジーパンに着替えた2人が売店で働いていた。演目の解説者の若い女性がウエイトレスに変身していたりと、ここは職員総出のオペレーションなのである。

 



劇場の組手工法による天井がど迫力だ。釘を一本も使わず、伝統の大型木造建築技法を駆使している。名物村長といわれる兼瀬哲治氏が、建築家石井和紘氏に頼んで、県産の木材を使い在来工法に先端技術を取り入れて造った。人口3000人の村に、その10倍を超える年間観光客が訪れるというから、文楽による村興しは大成功といっていいだろう。穏やかな陽ざしのなか、芝生で遊ぶ子供たちをみながら若夫婦が昼食をとっていた。
物産館で販売している食品を中心とする地元の物産品も充実している。文楽をモチーフとしたものがほとんどないのが残念。さらなる商品開発の可能性が残されているように感じられた。

(2003/4 よこやまゆうこ)

   


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