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工房探訪その3「梅染めの達人 山本 晃さんを訪ねて


『布づくし・展 日本の布200選』の出展者をお訪ねするシリーズ第3弾は京都で梅染めをする山本 晃さんです。

天神様でおなじみの京都北野天満宮には2000本もの紅白梅の木が植えられています。菅原道真と梅は切っても切れない関係にあることは、九州太宰府の飛梅(とびうめ)などでもよく知られているところです。

山本さんは、20年来、全国各地や北野天満宮の紅梅の若枝から紅色をいただいて着物や帯、スカーフなどを染めています。山本さんが、梅染めに手を染めるきっかけとなった文献には、中国から薬として大和に渡った梅が、飛鳥時代には法隆寺の幡と呼ばれる織物に用いられ、平安時代には織りの梅重ね、室町時代には染め色として梅染め、赤梅染、黒梅染の梅三品が確立していた、といったことが記されていました。これを知った山本さんは、友禅染めの原点と思われるいにしえの色を復活したい、との強い思いに駆られ、それから梅染めの長い旅が始まりました。

文献から梅染めのことを知った山本さんは、北野天満宮のすぐ近くに住まっていることもご縁と、払った紅梅の枝を分けてほしいと宮司さんにお願いし、譲り受けることができるようになりました。初めてその研究の成果を発表できたのが12年後の1990年のことでした。

 

 


山本さんの工房には、資料や文献、図鑑に本、集めた団栗、さまざまな枯葉を貼った紙、試し染めの端切、色とりどりの染め液の入った瓶、そして、梅の枝を煮出した液にトルマリン石を入れた不思議な飲み物まで、所狭しと置かれています。(この不思議な液体は、山本さん愛用の魔法の健康飲料なのです。梅染めの頭巾を被った山本さんは、ちょっと花咲じいさんのようですね。)ちなみに山本さんの雅号は梅染晄です。

枯れた葉っぱは、その微妙な色合いをどうしたら出せるだろうか、と研究するためのお手本。ぼろぼろになった一冊の植物図鑑には、その木の皮や葉が張り付けられ、その樹皮で染めた試し染めの布が張り付けられ、山本さんの長年の研鑽の結晶とお見受けしました。“自然は色彩の先生”、という山本さんの呟きが印象に残りました。
今、山本さんが研究しているのは、松竹梅の色を染め出すこと。自然から頂いた吉祥の色で染めあげた着物!竹は葉から緑がとれるそうです。

 


 


お訪ねした工房で、梅染めを体験させていただきました。手品のように美しい梅染めが生まれた様子を、簡単にご説明しましょう。
大きな寸胴でくつくつと煮出されている梅の木片。深い紅色が煮だされています。ごつごつとした節を持つ紅梅の若枝の表皮の下に、花のために用意された紅色がしっかり貯えられているのが感動的です。
むら染めにならないよう、先に梅の灰汁の薄い液に布をくぐらせます。この液の濃さも、計ったりするのではなく、指でぬるぬる具合をみます。好みの濃さに染まった布を取り出し水洗い。ご飯が酢になるまで置き、そこに錆た古釘をいれて作った鉄漿媒染液に布の半分を浸し薄紅色とグレーのグラデーションを出してみました。この媒染というのが、染色の世界の魔法の小槌。何を媒染にするかによって、梅染めは濃淡の茶色、黒みのある深緑にもなります。展覧会に出品された一枚は、ほとんど真黒な帯だったので、この黒い布が梅染めとは、、、と悩んだのでした。梅染めについてもっと詳しくお知りになりたい方は、梅染研究所(TEL 075-801-1137)のホームページへ[LINK]。

(2004/4/5 よこやまゆうこ)


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