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有松鳴海絞の未来を見つめる村瀬 裕さんを訪ねて


2004年度のOZONEでの『布づくし・展 日本の布200選』に参加して下さった村瀬 裕さんを有松町に訪ねました。愛知県の伝統的工芸品としては比較的大きな産地の有松鳴海絞ですが、実情は将来への模索が続いています。 村瀬さんは新商品開発の委員長として、名古屋ヒルトンホテルのロビーに試作品を展示するなど、アピールに熱心です。駆け足で有松の現状を案内していただきました。

絞り染めの歴史は古く、奈良時代から日本でも行われていたとされています。細かな絞りを追求する京絞に対して、有松鳴海絞は、絞り方の多様性が特徴です。100種類以上の絞り方があるといわれ、仕上がりのパターンもバラエティに富んでいます。有松鳴海では、地場産業として栄えた時期が長かったぶんだけ分業体勢が確立したともいえるでしょう。模様を考え、型紙を彫るー布に青花で下絵をつけるー絞る−染める−ほどくー仕上げといった段階ごとに専門の職人が作業し、以前は影師と呼ばれるコーディネーター役が全体をまとめていました。分業が確立したために創作的な自由度が少ないことが、後継者の減少につながったのかもしれません。仕上がりを想像して描いた図案を絞り、染め、糸をほどくときのわくわくする気持ちが味わえないのでは、無理からぬ気がします。

     
   
     
    鳴海で8歳の時から三浦絞りをしてきた89歳の北野とよさんに、紬の着尺に横三浦という絞りを行う作業を見せていただきました。幅40cmほどの布を針金ですくって一段に21ツボを均等に絞ります。単調でありながら気を緩めることのできない作業です。難しい横三浦を手絞りできるのは、もうとよさんしかいないそうです。80年絞ってきたとよさんの吐く息吸う息の揺らぎが、手絞りの優しさや味わいを醸しだすのだと思いました。とよさんにも跡継ぎはいません。
     
 
     
    有松鳴海絞りが浴衣を中心とした産業から大きく変化したのは、1992年有松鳴海で「第1回国際絞会議」が開かれ、有松鳴海絞りが世界のテキスタイル業界の注目を集めたときといえそうです。94年のイタリア・コモでの展示会以降、ミラノ、ルクセンブルグ、ニューヨーク、サンフランシスコなど、世界各地で展示会を開きました。また、この会議以前からイッセイミヤケがプリーツプリーツのシリーズで絞りのテクニックを駆使したファッションを創造したのをはじめ、多くのDCブランドのデザイナーが絞りを起用しました。これにより絞りは着物の世界から洋服のためのテキスタイルへと広がりました。従来の着物の絞りは、絞った部分を湯のしし、平面的な模様としての面白さを狙ったものが主流でしたが、ファッションデザイナーやアーティストの感性を通すことにより、立体的なボツボツ感が、絞り独特のテクスチャ−として好感されたのです。その後も技術改良が進み、天然繊維でも絞りが消えない形状固定ができるようになりました。

村瀬さんは母方の家業を継ぐためにこの世界にはいりました。絞り職人としてのスタートでした。その後、絞りとのかかわりを大きく変えたのが、92年の『第一回国際絞会議』での実行委員としての経験でした。大きなファッションの世界が活動の場となることを肌で感じ、30代の村瀬さんは、絞りの可能性に賭ける気持ちになりました。それからは、家業を続ける一方、新しい絞りのインテリア分野への可能性を求め、共同で「シボリドットコム有松」を立ち上げ企業化を目指しました。東京ビッグサイトでの「IPEC 21」への出展、2002年からは愛知万博のための企画など、絞りの未来を目指して、牽引役として多忙を極めています。
     
 
     
  村瀬さんは異素材による絞りの開発にも熱心です。ステンレスと木綿で織られた布を絞り染め一部を燃やすと、焼け残ったステンレスと染められた綿の部分がコントラストをみせる不思議な布ができます。びっしり絞ったうえに銀ラメを塗り、糸をほどくととんがった頭にラメがポツポツと光る布も魅力的です。柿渋で染めたものは、今にも動きだしそうで有機物のような存在感があります。
村瀬さん曰く、“技術的には何でも絞ることが可能です。これを商品化するのが難しい”。これからは、インテリアとして活かせる商品の開発を目指しています。ホテルで展示されたJapan Brandでは、絞りのテクスチャーをガラスやアルミに移しとった新商品も展示されていました。これらの表現力が、絞り染めの未来に何をもたらすのか、楽しみです。

村瀬さんの連絡先:
スズサン 052-623-3412
suzusan@japan-net.ne.jp

シボリドットコム有松のHP:
http://www.shibori-jp.com/
office@shibori-jp.com
     
    <お知らせ>
第6回国際絞り会議2005JAPANが5月14日(土)-17日(火)まで東京/多摩美術大学八王子キャンパスで開かれます。詳細はwww.tamabi.ac.jp/tx/iss/
また、ポスト会議として5月19日(木)-22日(日)まで名古屋/有松 で開かれます。

(2005/4 よこやまゆうこ)

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