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『画廊沖縄』の再出発を祝って


那覇市街から車で20分ほどのところに『画廊沖縄』が装いを新たにオープンしました。
市街からの道筋にはさとうきび畑が続き、せいぜい3階建ての建物がのんびりと建つ程度。そこに、正真正銘の現代美術をかける画廊が出現したのです。画廊主の上原誠勇氏は若き日より現代美術に傾倒し、収集を続けてきた人物です。
オープニング企画は、氏の最も好むというフランク・ステラ展。ミニマリズムの旗手ともいわれているF・ステラは今年70歳を迎え、いまだその制作意欲は衰えることなく、アルミやステンレスなどの素材を用いて新抽象表現主義の最前線にいる画家。再出発を飾るにふさわしい展覧会となりました。
『画廊沖縄』が発行するThe Gallery Voice No.24から、誠勇氏の文章を少し。

 
    、、、ミニマリズムは文字通り最小極限の芸術(造形)であり、個人的な感情や主観的表現を排除し、単純な行為を反復する禁欲的な芸術表現である。物事の「本質」から目をそらすことなく、「目の前のモノが何であるか」ステラが発した「見えるものだけが見えるものなのだ」と言うあまりにも有名なミニマルの極地の言葉は、現在も「本質論」に於いて生き続けていると言える。その事を現在の沖縄社会状況にミニマルのフィルターを押し当ててみよう。我々は見ていて見ない振りをしていないだろうか、脳神経が鈍磨して見えないのか。目の前に広がる広大な米軍基地を見て、「本質」の坂を下ってゆくと「何かが」見えるはずである。、、、、(略)、、、
異質と同質、異常と正常、マイノリティーとマジョリティー、同次元と異次元、個々のパーツがニュートラルな空間でベクトルをもって自律し、調和した美しい物体として存在している。私たちはそれらの作品から今日社会の在りようの諸問題を含む「共生」と「尊厳」の深いメッセージ性を発信している事に気付かされるであろう。この事は今回の展示された数点の作品からでも読み取る事が可能だ。「ミニマリズムの旗手」とも言うべきフランク・ステラの60年代から今日に至るまでの作品の軌跡をたどるきっかけを持つ事は、今日に於いて意義のある事だと確信している。我々沖縄社会に於いても、また広く日本社会のマイノリティー対処の諸問題に対しても、課題解決や論考に本質にまで至らない類がどれほど流布していることか。ステラのミニマル作品から現在の新抽象主義に至る経緯は我々に大きなインパクトを与えるだろうし、今日でも有効だと思う。、、、


と、芸術と社会の関連性に鋭く切り込む姿勢を示されています。基地問題のスッキリした解決を見ない沖縄という地にあって、若く純粋であった60年代の情熱を失わない画廊主の精神に感謝と声援を贈りたいと思います。
そして、沖縄に旅される機会には、琉球王朝の歴史と蒼い海を楽しんだら、このちょっと予期せぬ空間にでかけてみてはいかがでしょうか。因に、誠勇氏は、このサイトでも度々ご紹介している染織作家上原美智子さんの夫君です。
 
  画廊沖縄  098-888-6117     email:se-u@tontonme.ne.jp
    (2006/7 よこやまゆうこ)

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