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『京都ところどころ』

四月はじめの京都。盛りの桜と祇園新橋通の小路をぎっしり埋め尽くした人の波も潮が引くように消え、川沿いの柳はハの字ハの字の新芽をぐんぐん伸ばしていました。
ちょっとお勧めのhandmadejapan.com好みのところをご紹介してみたいと思います。

まずは、東山五条、馬町の交差点近くにある『河井寛次郎記念館』。柳 宗悦、浜田庄司らとともに民藝運動を進めた陶芸家河井寛次郎の住いを記念館として残しています。東大路通りからわずかに外れただけなのに静かな環境が保たれ、寛次郎自身の設計による家は、京の町屋とは風情を異にし、どっしりとした窓の桟や土壁の趣は民藝のこころあふれるもの。重量感のある陶器をはじめ、木彫、椅子、竹製のキャビネット、灯り、床板など、寛次郎の創作の幅広さを感じさせてくれます。中庭は、町屋の坪庭とは異なり、広く開放感があり、新築祝いに石灯籠を贈ろうとした故郷の知人に、彼がたって望んだという大きな石の球体が目を引きます。藤棚の藤はわずかに芽吹き始めたばかり、満開の時の美しさはいかばかりかと、その頃に訪れるべしと手帳に記しました。家屋の奥には登り窯がそのままに残されています。寛次郎のとろっとした釉薬のかかった陶箱、たっぷりと流し描きされたスリップウエアや三色打薬の扁壺が生まれた窯です。
足の便もよいわりには、観光客は少なそう。ゆったりと時の流れる空間は穴場です。
東山区五条坂鐘鋳町569 075-561-3585
休館月曜日、午前10時〜午後5時、夏期冬期休暇あり

二つ目は、四条河原町を少し下がったところにある『ギャラリーギャラリー』。大正末か昭和初期の建物という寿ビルの最上階。1981年、このスペースの生みの親であるアーティスト小林正和氏の逆転の発想から生まれたという無人ギャラリー。白塗の床、壁、天井に古びた窓枠、正面のガラスから中を見るのが正当な視点という小さなスペース。染織を中心とする内外のアーティストの発表の場となっています。今は有人ギャラリーとして川嶋啓子さんが企画運営を担当。訪れた日は、レグラ マリア ミュレーというオランダ在住アーテイストのビーズを刺繍した作品を展示中でした。横の部屋は、ガラスのロッカーともいうべき箱をアーテイストが自主運営することで貸し出される展示場。出展希望者が多く、空きを待つ若いアーテイストのリストが途切れることがないそう。ロッカーの中の作品を覗き、欲しいものが見つかれば購入もできます。藍染の新道弘之氏、絣の冨田 潤氏、編組アーティストの谷川鶴子氏らベテランの作品も見られます。
下京区河原町四条下ル東側 寿ビル5F
URL: www.fiberart-jp.com
http://www.showcasegallery.jp/
 
   
三つ目は、白川沿いを北に上がり、左京区北白川の『西村石灯呂店』。店と言っても、山の斜面に広がる苔むした灯籠や石の群れがそれ。飛鳥時代の礎石から室町時代の灯籠、韓国李朝の石の動物像などなど。石好きにはこたえられない空間がそこにはあります。伝統的工芸品の指定を受け、今や数少なくなってしまった貴重な石工の技を受け継ぐ4代目の父と5代目となる兄弟が、日本庭園の風情の守り役となっています。マンションの小さな庭であっても、ちょっと置いてみたくなる石や灯籠を見つけることができそうな気がしてきます。春は花見、秋は紅葉狩りの隠れたスポットにもなりそうです。
左京区北白川琵琶町15−1
http://www.shinise.ne.jp/highest/nishimura/index.html
最後に、京都の路地を歩いていると、路の狭さ故か、細長い空を横切る電線の凄まじさに唖然とします。せめてこの町からは、すべての電柱と電線を埋設できないものか、と強く思ったことでした。
   
    (2008/4 よこやまゆうこ)

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