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<その6>6194mのマッキンレー山を飛ぶ

旅の一押しハイライトと期待していたのが、マッキンレー山を水上飛行機で飛ぶこと。1988年に七大陸最高峰登頂者の田部井淳子さんが踏破に成功した北米大陸の最高峰。植村直己氏が行方不明になったのもこの山だ。 前日の予約では、山はすっぽりと厚い雲に覆われていてキャンセル。残る一日のチャンスに賭けることになった。祈りが通じたか、翌日のアンカレッジの朝空はどんより曇っていたが、山は輝いている!との情報。急ぎ飛行場に駆けつける。60mを越える強風で知られる山だけに、パイロットもこんなに無風でクリアーに晴れ上がる日は、年に4、5日あれば良い方、と興奮気味。やれることは全部やってあげる、とサービス精神全開で、山肌に触れるかと思われるほど近くを飛ぶ。雪の質感や雪崩の荒々しい跡なども、まるで望遠レンズで見るようだ。それでも6000mの山の半分の高度のところというから、いかに山が大きく高いかが実感できる。この山を足で登るなんて、ただただすごい!としか言いようがない。
山をはずれて5分も飛ぶと、穏やかな稜線の緑に被われた山脈につながる。静かな湖に着陸。又々おっかなびっくりでフロートに立つのかと思えば、今回はパイロットが機を岸辺へ引っ張ってくれ、靴を濡らすことなく上陸。紅葉し始めた晩夏の植物と灌木。輝く湖面に跳ねる魚影と、峻厳な雪山とは正反対の世界である。三々五々おしゃべりに興じ、オンボード。うねる川や大小の湖、果てしなく続く湿地帯を見下ろしながら帰路についた。誰もが満足感でいっぱい、幸運を祝しあった。 60代と思しきパイロットのカーティスさんは、ハワイのマウイ島をホームタウンと言い、昔はドバイの大富豪所有飛行機の専属パイロットなど華やかでリッチな世界も見知り、今は夏場はアラスカ、冬はハワイと、まことに羨ましいライフスタイルを送っている。素足に上質のローファを履き崩すという足もとだったので、ほ、ほ〜、この辺の人にしてはおしゃれ、と見ていたら、やっぱりのキャリア。いつまで飛ぶの、と尋ねられ、俺の死んだ翌日が引退の日、と答えていた。
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    (2012/8 よこやまゆうこ)

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