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『地中海航海日誌その3 <Covas del Drach龍の洞窟と遺跡散策>』

船はマヨルカ島北のAlcudia(アルクーディア)に停泊。ツアーに加わり鍾乳洞見物。乾燥した草地やなだらかな丘が続くハイウエイを小一時間走り洞窟のあるPorto Cristo(ポルト・クリスト)に到着。深さ25m、全長2kmほどの「龍の洞窟」と呼ばれる鍾乳洞は、中世に発見されたのち19c後半に本格的に調査され、170m余の広さをもつ世界最大級の地底湖が発見された。




一瞬照明が消され、真っ暗になるときがあったが、真の闇のなかに巨大な鍾乳洞を見つけたときの感動はいかばかりかと想像する。水深最大9mもある地底湖の水は、見た目2〜3mかと思われるほどの透明度。水面は連なり垂れる無数の鍾乳石の柱を映しかすかに揺れる。柱は1cm伸びるのに50年とも100年とも言う。50年の差など関係がないほどの長い時間がかかってできるということだろう。ハイライトは、闇の奥から灯りをつけた小舟が音もなく近づき、オルガン、ヴァイオリン、チェロ、チェンバロの4楽士が、オッフェンバッハの「ホフマンの舟歌」やスペインの楽曲を奏でる湖上コンサート。洞窟に響く音がもの悲しく、しばし神秘的な心持ち。鍾乳洞はどこも同じと高をくくっていたが、見応え十分であった。
夕暮れるヨットハーバーに地元の人々が出している屋台を素見して歩く。強烈な太陽のせいだろうか、鮮やかな赤が大好きな彼らの色感に圧倒される。観光客の子供たちが素朴で可愛い。ペディキュアを塗った子豚の芸に目を輝かせすっかり魅了されて後を追いかけてゆく。港のレストランでtapas(前菜)をつまんだが、概して揚げ物は油っこく、はずれであった。
観光地で当たりのレストランを嗅ぎ分け、口にあうものを注文するのはカンと運がいるようだ。
  翌日は、Alcudia(アルクーディア)の旧市街散策。五時といっても陽は中天に高く目がくらむ。アルクーディアはモスラムの町であったものが13cに征服され、14cには町を囲む城壁が作られたことで繁栄した。城壁は高さ6m、周囲1.5km。26の見張り塔のいくつかが残っている。歩けるように整備された城壁からは旧市街が見晴らせる。乾燥した茶色に強い日射しの影が落ち、シュールな絵のようだ。門の横に建つ教会では8時からミサが行われ、礼拝者の数は多くはないが地元の人々の日常がかいま見られた。
名所旧跡もさることながら、異国での楽しみの一つは、地元の暮らしぶりが伺えるスーパーマーケットに行くことだ。スペインの食文化は魚介と肉類ともに豊かだ。築地なみの多種類の魚や貝類。バラクーダやエイ、マグロの一種、小ぶりの黒鯛、鰯、名前不明の顔もたくさん。大量の生ハムが吊るされ切り売りされ、ソーセージの種類も多い。オリーブオイルは巨大な容器で売られているし、これでは太るわけだな〜と納得。スペイン経済は危機的状況とはいえ、民の食生活は豊かだ。
  空はゆっくりと時間をかけて紺碧から濃紺、黒へと沈んでゆく。
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(2013/8 よこやまゆうこ)

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