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『<湘南の漆>の若き漆作家たちー佐藤智洋さんと堀田洋二さん』

その2:修理・オーダーメイドも得意な堀田洋二さんを訪ねて


漆器は丁寧に使えば経年劣化の少ない丈夫なもののはずですが、使い方によっては、色が変化したり、欠けたり、光沢が失われてくることもあります。水につけてもいいですか、と問われてびっくりしたことがあります。塗椀が最もポピュラーな生活の器だったはずなのに、、、。でも、沸騰している熱湯を繰り返し注いでは、変色してくるでしょう。人の口に入るほどの味噌汁ならそんなことはありません。高いところから落とせば、中の木地が欠けることもあります。漆は紫外線にはめっぽう弱いので、直射日光に晒され続けると色あせたり、中の木地が縮んで表面がひび割れたりします。漆器は人間の皮膚と同じと思って扱いなさい、とはよく云われることです。そうして出来てしまったキズや変色を修理すると、新品同様に生まれ変わるのも漆ならではです。


堀田さんは鶴見大学文化財学科で漆芸史を学びました。実技を学ぶクラスもありました。でも、このような勉強が生かせる就職先は限られています。そこで、手しごとが好きだったこともあり、会津の訓練校に進み、漆仕事の技を身につけることにしました。この訓練校の先生たちは職人さんが多く、それぞれの技を熟練の職人さんから直接学ぶことができました。授業のない週末には丸物塗師の工房で椀の下地を手伝わせてもらったり。2年間の学校での訓練ののち、儀同哲男さんという職人さんのもとでさらに2年間、重箱や角盆など板物の下仕事、寺院の建具を塗ったりして技を磨きました。一方、他の職人さんから本堅地を習いうなど、技の守備範囲を広げて行きました。そして、少しずつ自分の作品を作り販売ルートに乗せることも始めていました。漆の技法は多岐にわたっているため、どのような技をどれくらいの習熟度で身につけているかによって、作れる作品もその質も違ってきます。そうした多様な技の習得のおかげで、堀田さんは創作から修理、特注漆器の制作と、幅広く手がけることができるようになりました。

そして9年前、独立と同時に結婚し、出身地の横須賀にもどり看板をあげました。運良く、古美術商から木の栞(しおり)に漆をかけてほしいとの注文。数万単位の栞を塗る作業は上塗りの練習にはもってこい。箸屋からの注文なども入り、キャリアを軌道に乗せることができました。 鎌倉は神社仏閣が多く、修理の仕事もあるはずなのですが、昔から他産地に発注する習慣があるようで、地元の漆職人にはなかなか廻ってこないとか。それでも、お寺に飛び込みセールスということもしてみたい、と堀田さんは思っています。それには、36歳にして、いずれは弟子をとりたい、との思いがあるからです。それは師の儀同氏の教えである“上から伝えられた技は、下に繋ぐ”を実践したいと思うからです。こうした若い作り手が、習得した手わざで暮らしてゆける国であり続けてほしいと強く願います。

堀田さんのウエブサイト
    (2016/1 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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