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漆塗りの万年筆fromスイス
 

Martin Pauliさんは、スイスで漆塗の作品を作っているアーティストです。伏見眞樹さんのお知りあいで、マーティンさんの漆塗万年筆が、来る11月に銀座伊東屋で日本初公開されると聞き、メール・インタビューでその経緯を伺いました。以前からネット上で、漆と思われる技法を駆使した文字盤の時計を見つけていて、いったいこの作者はどのような人物なのか、、、と関心を持っていたところでした。

マーティンさんは、若い頃からアーティスティックな才能を豊かに持ちつつ、一方、その才能や関心をどこに向けて発揮すればよいかと迷いつつ、多方面にもの作りに関わっていらしたようです。18歳のときに作ったナイフから日本の刀や金属工芸品に興味を持ち、時計の文字盤という小さな面積に芸術的な意匠を凝縮した時計を作るようになりました。さらに、マーティンさんの日本への関心は、今や日本人でも知る人の少なくなった水石芸術へと向かいました。水石とは、中国南宋時代に発し日本へ輸入された自然石を山水景観にみたて鑑賞する公家や氏族の文化。マーティンさんは、水石の本まで出版されています。
 

そして、石をのせる台座を自ら作ろうと試みた時、漆との出会いがありました。気触れるというやっかいな樹液の扱いから、適切な温度と湿度による乾燥の具合、研ぐという作業など独学するには難しい素材を、試行錯誤のすえ何とか我がものにし、今や、さまざまな変り塗をまとった万年筆をエボナイトを研ぎ出すところから作るという、実に驚くべき創作をしていらっしゃいます。とはいえ、やっぱり合理精神旺盛なヨーロッパ気質のゆえか、同じ美しさを短時間で得ることができる焼き付け技法を用いています。伝統的な漆塗り技法で作れば、数倍の時間、数倍の価格になってしまいます。

さて、日本初公開の銀座伊東屋での展示。彼は15本の万年筆を送ったそうで、伊東屋がどのように販売してくれるか楽しみにしているとのこと。日本人以外が作った漆の仕事がどのように評価されるか、興味ふかいところです。
マーティンさんの市場は、ヨーロッパのみならず、香港、シンガポール、上海と広がりをみせています。Urushiの知識のないヨーロッパでは、漆塗だからではなく、美しい万年筆として評価が高く、漆が知られているアジアでは、富裕層に愛用者が多いとのこと。不必要に和=日本的を感じさせず、洗練されたセンスと完成度の高さが、国際的商品として訴求力をもつことの一例ではないでしょうか。
昨今、日本の漆器業界は青息吐息と聞き及びます。アイテムを変え、新しい市場に歓迎される漆製品作りの参考になる一例ではないでしょうか。漆に関心のある方、必見です。

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Manupropria Timepieces

  *展示
銀座伊東屋 本館3階 万年筆売場
03-3561-8311
『蒔絵フェアー』
2016年11月8日〜11月21日
 
(写真はすべてMartin Pauli)
(2016/10 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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