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<番外編>地機(じばた)の織りを体験する
<番外編> 地機(じばた)の織りを体験する
昨今、私たちの暮らしに麻という素材がファッションとして根付いたような気がします。タオルやシーツ、ブラウス、ジャケットにパンツと、蒸し暑い夏の暮らしには欠かせないテキスタイルとなっています。上質の麻布のほどよい皺がお洒落な着こなしとして好まれています。
今回、地機による織りを体験した近江上布は、滋賀県湖東地域で室町時代から伝えられてきた地場産業です。江戸時代には、良質な麻布「高宮布」が作られ、彦根藩の献上品とされてきました。日本では昔から、麻布には大麻と苧麻の二種類の麻が使われてきましたが、大麻は苧麻に比べ品質が劣るため、日常着に使われていました。高宮布は、良質な大麻を高い技術によってきめ細かく光沢のある美しい麻布に仕上げたものです。琵琶湖に近い湿潤な気候と豊富な湧水が、美しい麻布を作るには欠かせない環境です。

(近江上布伝統産業会館パンフレットより)
その糸作りは、時間と根気のかかる作業です。苧(ちょ)と呼ばれる麻の線維を手で細かく裂き、結び目を作らずに縒りをかけて長い糸に繋げるのです。気の遠くなるような作業です。そして、高機ではなく、地機と呼ばれる機を使って織ります。経糸(たていと)を腰に回した帯を引いて緩めたり張ったりして開口を作り、そこに緯糸を入れてゆきます。高機に比べると、綜絖も筬も固定されておらず、ぐずぐずと動くのでとても不安定です。まず、右足でペダルを踏んで同時に腰を緩めると開口部ができ、そこへ大きな杼を差して糸を打ち込み、左に抜きます。次は腰を引いて経糸を張ると開口部ができるので、左から杼を差し込んで糸を打ち込んで抜く、この繰り返し。今回の体験では、蔵から出てきたという100年前の大麻糸を使いました。織るときは、乾燥で糸が切れることのないよう、しっかり水を含ませることが肝要です。慣れない作業を30分もやっていると腰がだるくなってきますが、一時間ほどでコースターを織ることができました。14〜15mの着尺を織り上げるには、どれほどの修行と習熟の技が要るかが良くわかりました。
この織り体験は、東京赤坂の伝統工芸青山スクエアーで、伝統工芸士・南 和美さんの手ほどきを受けました。近江上布伝統産業会館のサイトは http://asamama.com

(2017/5 よこやまゆうこ)

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