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『書籍紹介』


昨年から今年にかけて、3冊の漆の本が出版されました。3冊3様。それぞれの立場から、漆のこと、塗りのこと、そして漆器について語っています。書き手はみな古い馴染みの方々。嬉しくなって、一気に3冊、ご紹介します。

『漆の器それぞれ』 

高森寛子著 バジリコ株式会社  
定価 1680円 ISBN:4-86238-009-3

作り手のことが知りたい方に、是非、お勧めしたい一冊。『美しい日本の道具たち』(晶文社)や、『ほんものの漆器 買い方と使い方』(共著 新潮社)などの著者高森寛子さん渾身の書き下し。自他共に認める“使い手のプロ”が、漆器の作り手30人の「食器」70点を紹介しています。限られた紙面のなかで、30人の作り手たちの思いをそっくり伝えようとの語り口から、著者の漆への深いかかわりと愛情が伝わってきます。その最後には、昨年秋に亡くなられた角 偉三郎氏への最期のインタビューとなってしまった聞き書きもあります。
20年近くのあいだ、毎日使える漆の器のことを、分かりやすく、親しみ易く紹介し続けてきた高森さんが、“二〇〇六年現在の、生活道具としての漆の器のありよう”を紹介してくださってる、漆好き必携の一冊です。
 
  『漆 塗師物語』  

赤木明登著  文藝春秋 
定価2238円+税 ISBN :4-16-368270-8

1994年10月、赤木さんは漆作家として衝撃的なデヴュ−を果しました。東京西麻布の主に陶磁器を扱う店桃居が赤木さんの漆の器で埋め尽され、大手出版社からの祝いの花が立っていたのです。赤木さんは世界文化社の編集者をしていた27歳のとき角 偉三郎氏の作品と出会い、そのまま漆の道に踏み込んだという異色の作り手です。
初個展のあと、修行時代に親方とともに天井の漆を塗りかえたという白峰村にある寺に案内していただいたとき、住職が彼のことを“職人さん”と呼びました。作家デヴュ−した赤木さんとして知り合った私は、住職の“職人さん”の言葉に一瞬、あー、と思ったのですが、彼は当然のごとく、穏やかな表情をしていたのが印象的でした。
『漆 塗師物語』は、赤木さんが漆に出会い、人に出会い、家族と一緒に新たな道を拓いていった物語です。職人になるということ、精妙なる篦のこと、そして器とは何か、を問い続けて仕事する様子が、巧みな文章によって綴られた希有な本となっています。お勧め度☆☆☆☆☆
『いつものうるし』 

桐本泰一監修 株式会社ラトルズ 
定価 1800円+税 ISBN4-89977-103-7

「はじめて知った。毎日使うとうるしがよろこぶということを」と帯にあります。見出しを見ると、・うるしでラーメン ・うるしでカレーライス ・うるしでハイハイ などなど。ラーメンやカレーを食べたくなるような漆の器を作って、全国行脚して漆器の普及に努める桐本さんによる、“もっと漆に親しんで!”のメッセージ満載の一冊。
桐本さんは輪島の朴木地屋の3代目。古い形を受け継ぎ、現代の用にふさわしい形にデザインし、木地を作ることを本業としてきました。けれども、もう輪島に座って注文を待ってはいられない!と、約10年前から外に出ることを始め、5,6年前から特に集中した企画展などを開き、遂に一昨年、日本橋三越本店5階に販売コーナーをもち、使い手とのコミュニケーションから新しい漆器の使い手を育てる作業を繰り広げています。本を読んだら、さっそく彼の漆たちに会いに出かけてみたくなること、受け合います。
    (2006/7 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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