Home Feature Side Story Shopping About Us
 
prev.

 

<その4>船内探検記

船の操縦室の見学を申し出た。10階にある操縦室ブリッジは、何ともいえない透明な空気が流れている気持のよい空間だった。部屋の1/3ほどの入口の壁を除いて、残り総てが窓のせいか、碧の水面の光を反射して青い空間である。ずらりと計器が並び、現在地点と進む方向が示されている。後に控えたオフィサーが数字を唱えると、もう一人が復唱する。それ以外の会話はない。船長は真ん中央に座って海図を見ている。キャプテン席に座らせてくれた。すこぶる座り心地のよいリクライニングチェアーだった。見下ろす船首にはHマークのヘリコプター発着スペース。映画『タイタニック』で、主人公が船首から身を乗り出して両手を広げるシーンが思い出される。因にタイタニック号遭難は1912年、今年は100年目にあたる。
ガリー/調理室も見学。乗客と従業員あわせて500名ほどの食事を賄う裏方。寄港地からはいっさい食材を調達せず、すべて補給されるシステムだ。因に一ヶ月に使う卵は2万個とか。ルームサービスのフィリピンのボーイさんは、トヨタ自動車で3年間働いていたことがあり、景気が戻ったらまた働きたいと熱心にいう。彼は8ヶ月の契約で乗船している。
船内探検の最後はエンジンルーム。船はノルウエー製。主エンジン2基に副エンジン3基。ジーゼルエンジン始動とともに発電もする。冷却は海水。残飯類は分別→乾燥→焼却→灰は寄港地に月に一度の割合で持ち込まれ処分される。その量およそ700粒平。排水も濾過され最後の水は外海に放出される。メンテナンスや修理設備も完備。つなぎを着たエンジニアが溶接をしていた。要するに、すべてが船内で完結するよう、ミニチュアの町の機能を有しているということだ。どこのセクションでも、油臭かったり、ゴミの匂いが充満していたりということがいっさいなかったのが印象的だ。 船内各セクションで圧倒的に数が多いのはフィリピン人従業員。基本的に人懐っこいこと、英語を解すること、クリスチャンであることなどからか、英語圏での働き手として歓迎されている。船の心臓部をツアーしてくれたのは若いイタリア人エンジニア。10週間働いて10週間休暇のシフト。休みにはマンマの手料理を食べにローマ近くの実家に帰るのを楽しみにしている、と若者の顔に戻った。
※各写真をクリックすると拡大します
    (2012/8 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

このホームページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。

 

(C)Copyright 2000 Johmon-sha Inc, All rights reserved.