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『地中海航海日誌その8 <Sicily(シシリー)島探索>』

イタリア半島のブーツの爪先にある地中海最大の島シシリー島。九州の60%ほど。紀元前3世紀にはアルキメデス、19世紀には作曲家ベッリーニが生まれている。シシリーとくればマフィアだが、観光客には関係ない。が、コーザ・ノストラと呼ばれるギャング組織は健在のようで、BBCニュースは、そのドンがこの8月9日に19年の逃亡の果にロンドンで逮捕されたと報道。隣人は穏やかなおじいさん、驚いたとコメントしていた。
Taormina(タオルミーナ)は海抜800m。人口1万ほど。お目当てのギリシャ円形劇場までの目抜き通りにはブティックやレストラン。遺跡ではヨーロッパ最大3300m余の噴煙を上げるエトナ火山が背景に見えるはずだったが生憎の曇り空。当夜のコンサートの準備でスピーカーやアンプが運び込まれという状況では、遥かな往時を偲ぶ雰囲気はなし。が、遺跡が有効活用されているのはいいことだろう。ガイドが、劇場の一番近くに出店しているアイスクリーム屋はサイコー、ぜひお試しをと強調する。というのも、アイスクリームを発明したのは自分たちであるとシシリー人は主張する。8世紀、侵略者のアラブ人が果汁を冷やそうとエトナ火山から雪を運び出したとき偶然固まって“グラニータ”になったと。屋台に群がる大きな背中やお尻(おデブちゃん)に圧倒されて試食は断念。今回の旅を通じて痛感するのは、肥満という病はますます蔓延しているということ。もう一つは、西欧人の日焼け願望の根強いこと。休暇明けに白い顔でいるとまずいのだろうか、痛々しいまでに焼く。TVでは皮膚がんが増えていると警鐘を鳴らすが、耳に入らないかのよう。
さて、エトナ火山は、我らが富士山のようにシャープな線で一気に裾野に駆け下りるというよりは、左右均等になだらかで大らかな広がりを見せる。過去130回も噴火、1669年には2万人が犠牲に。今年の春の噴火のニュースも記憶に新しいが、登山は悪天候にてドラマチックなものにあらず。今年は例年になく雨が多いそうで、船から見るシチリア島上空は激しい稲光が2時間ほども続いた。
総じてシシリーは貧しい。教会の入り口で、遺跡への道ばたで乳飲み子を抱いてお恵みを求める女性の姿が目を引く。主たる産業は季節限定の観光だが、タオルミーナの目抜き通りでさえシーズンオフは閑散としているという。町のメンテナンスも良好とは言えず、財政豊かとは思えない。南欧の国々が再び輝きを取り戻し、文明の表舞台に再登場する日は来るだろうか。
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(2013/8 よこやまゆうこ)

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