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『木彫刻作家 大竹亮輔さんの印籠』

SideStory#315でご紹介している自在置物という明治から続く工芸の流れを継ぐ大竹亮輔さん。細かい仕事なので、次々作品が生まれるというわけにはゆきません。展覧会に出展されるときには、すでに所有者が決まっているという超人気作家です。今回はプライベートの注文を受けて制作された印籠を見せていただきました。

注文は、常備薬を入れて持ち歩くための印籠。注文主の縄文土器好きを受けて、大竹さんは迷わず土器の形を彫り出すことにしました。選んだのは長野県寄山遺跡出土縄文中期の土器。肩がはり裾すぼみ。うねる曲線模様が立体的に表裏をぐるりとおおっています。蓋はカチット組み合う仕組みが工夫されていて、組紐をずらして中の丸薬を取り出せるようになっています。材は御蔵島の黄楊(つげ)。黄楊は木質が密で粘りがあり細かい模様を彫り出すには最適と言われています。そのままでは白っぽいので、タンガラ、矢車、茜、五倍子などで染めてあります。深い色合いを出すために繰り返し染めるという、見えないところに時間をかけた作業だったことが伺われます。3、4カ所に小さなオパールがきらりと光るところも楽しい遊び心。使うほどに手の脂でほどよい光沢がでてくるのが楽しみな一品です。
小さいものの中に、たっぷりの時間と工夫と手技がぎゅっと込められている工芸品には、力をもらえそうなパワーや、幸運をもたらしてくれる御利益など感じられて嬉しいものですが、この縄文土器印籠にも、そんな霊力がありそう。
ひとがモノに惹かれる理由はさまざまあるでしょうが、持っているだけで心うきうき、取り出して眺めては一人ニヤニヤ、そのうえ用途を満たしてくれるとなれば、これ以上の贅沢はありません。
スイス製高級時計も、フランス製宝飾品も、この世にたった一点だけ、ということは希です。この印籠は、文字通りこの世にひとつだけの宝物といえるでしょう。


大竹亮輔作品巡回展覧会予定
『驚異の超絶技巧!〜明治工芸から現代アートへ』
岐阜県現代陶芸美術館(岐阜) 
2018年6月30日〜8月26日

山口県立美術館(山口)
2018年9月7日〜10月21日

富山県水墨美術館(富山)
2018年11月16日〜2019年1月14日

あべのハルカス美術館(大阪)
2019年1月26日〜4月14日
    (2018/5 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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