Home Feature Side Story Shopping About Us
prev.
<番外編><シリーズ・私のたからもの>『染色作家・尾白直子さんの宝物は手作りの染布帖』
   こちらでその閉廊をお知らせした『歩”ら里』を20年余りも続けていらした尾白直子さんの宝物は、画廊運営の合間を縫って通いつめたインドで染めた布をまとめたお手製の『染布帖』です。
    東京から八ヶ岳南麓に移住して35年。毎日眺めても飽くことのない甲斐駒ヶ岳の雄姿、南アルプス連峰や富士山の美しさ、四季折々の風景、樹々の移ろい、テラスに来るさまざまなな鳥たち、そして東京暮らしでは出会うことのなかった人々との交流、これらすべてが私の宝物だと思っています。
    その中でも強いて選ぶとしたら、長年染色を続けてきた最後の10余年間、インドに通って染めた布をまとめた折本帖10冊が、2度と作ることのできない宝物かなと思いました。

    年中行事になっていたインド染色旅行も、コロナ感染拡大により2020年1月が最後になってしまいました。それまで10年間(インドへは16回)ジャイプール郊外の染色工房に通い、インド独特の泥のりを使い、木版プリント(ブロック・プリント)による服地や帯地を染めていました。
    私がインドの染色工房に通い続けてこられたのは、まず、野蚕のシルク地が豊富に手に入ること、化学染料主流のなか、天然染料にこだわっていること、泥糊による木版プリントが、大胆でおおらかなデザインも、細かい幾何学模様も共に表現しやすく、特に緩やかでファジーな”絵ぎわ”が気に入ったことでした。さらに、工房を自由に使わせていただけて、職人さんたちが気持ちよく協力してくださり、短期間で沢山の布を染め上げて帰国することができることなどでした。
    コロナ禍で、国内さえも外出がままならず、家で落ち着いていることができたので、この機会に今まで染めた布の残布の整理に取り組むことを決心!服や帯の仕立残布が溜まりに溜まり、ダンボール3箱にもなっており、気になりながらも手付かずで置いてあったものです。
    これらの布を見ながら、大量の布を整理かつ消費するにはどうするかを考えたすえ、まずベッドカバー2枚を作ることにしました。25cmx25cmの正方形の布を140枚カットし、パッチワークでベッドカバーに。さらに残った小さな布で『染布帖』を作ることにしました。
    以前、布川次男先生に折本制作の手ほどきを受けていたので、A5サイズの折本10冊を作ることにしました。表紙、裏表紙の布を選び、中に貼る染布は10cmx12cmのスワッチを150枚、それらすべてを和紙で裏打ちし、デザイン・色などにしたがって分類しました。
    完成した10冊の『染布帖』を並べてみて、こんなにゆっくりじっくり染布を眺めながらの折本制作に集中し夢中になれたのもコロナ禍のおかげと、折本にまとめられたことが私の宝物になりました。

尾白直子・山梨県北杜市
(2022/8 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

このホームページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。

 

(C)Copyright 2000 Johmon-sha Inc, All rights reserved.