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<実験工房>『ガラスに和紙』
   こちらで、山荘の板壁に和紙を張り巡らせたことがありました。今度はガラスに和紙を貼る、のレポートです。
   ベランダに設置されたエアコンの室外機は必要悪、避けることのできない醜いものとして諦めることが多いのではないでしょうか。さらに、向かいの建物からの視線も気になります。今回、この課題を解決すべく調べてみたところ、プラスチック・シートが候補に上がりました。ネットやカタログから、実に多彩なデザインが定番として提供されていることわかりました。店舗やオフィスの仕切りとして全面すりガラスに見えるものから、熱帯植物、お花畑、雲、竹林などの癒し系からグラフィックなデザインまで。さらに、特注で好きな絵をデザイナーに描いてもらうという選択肢まであります。が、どことなくテカテカしていて、狭い居住空間にはちょっと不向きな気がして保留。

   次に閃いたのは雪見障子。ご存知でしょうか、障子の半分を上にスライドさせ、畳に座った位置からガラス越しに風情ある雪の庭を見る、という趣向の和の知恵。が、ガラスドアの前にもう一枚建具を立てる必要がある。一気に部屋が純和風になる、など、これも保留。
   でも、和紙の機能と風情は捨てがたい。結露を吸い取りまた蒸発させ室内の湿度調節をしてくれる。手持ちの和紙コレクションから機械漉きの真っ白な紙、繊維がもやもやと見える紙、ややベージュっぽい手漉き和紙など、4種類を30cm角のガラス板に煮のりで貼って実験。その中で一番気に入ったのは富山県南砺市で漉かれている五箇山の手漉き紙。調べてみれば、かの地は山深く稲作ができず、加賀藩は年貢として和紙を求めた、と。400年以上昔のことです。早速、東中江和紙加工生産組合の宮本工房に連絡。サンプルを送りすぐに必要量の二三版(60x90cm)の手漉き和紙を入手。
   さて、次は誰に貼ってもらうか。過去に土壁や板壁に和紙を貼ってもらったことのある東京松屋のベテラン職人の北郷さんしかない。のりは煮のりにボンド系を混ぜたもの。手漉き和紙の「みみ」と呼ばれるボサボサを意匠として生かすべく、10mmほど重ね貼りにしました。お弟子さんの高杉さんとのチームワークも上々、6時間で作業完了でした。
   これにて、ほどよく日光が透過し、かつ視界を遮断する4枚のガラスドアの完成。和紙はすばらしい!!今後、剥がれてきたり、染みが出てきたりしないか、楽しみつつ経過観察しようと思います。
(2023/2 よこやまゆうこ)

(C)Copyright 2004 Jomon-sha Inc, All rights reserved.

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